カウントダウンを君と

 「あれ?キー兄まだいたの?」
 事務所にいくととっくに帰ったと想っていた長兄の姿がまだそこにあって驚いた
 あと数分で年が明けるというのに 家には帰らずどうやら仕事をしていたらしい
 「もう……生真面目なのはいいけどさ ケイト義姉さんが待ってるんでしょ?早く帰ってあげなよ」
 そこまで云ってふと気付く
 「そういえば……珍しいね キー兄が行事よりも仕事を優先するなんて」
 いつもならこの程度の仕事は次の日にまわして早めに帰ったりする筈だ
 なんせこの長兄は酷く家族想いで仲間想いで なにより妻想いであるのだから
 余程仕事でトラブルでもない限り いつもならばもう家に帰って義姉さんと二人でゆっくりとすごしている筈だ
 なのに……
 「なんかあったの?ケイト義姉さんと 喧嘩したとか?うーんそれはないか……想像つかないもんね まぁ喧嘩じゃないにしても 家に帰らない理由でもさ」
 そうして長兄夫婦の仲を心配している一方で キー兄と共に年越しできることを嬉しがっている自分がいることを認めている
 独り身の自分には一緒に年を越してくれる人間なんて部下たちくらいしかいなくて それを時々ではあるが淋しいと想う自分がいて
 だからこうして普段ならば到底一緒に年越しなどできないであろう長兄と共に年を越せることがとても嬉しくてならない
 ……本当は 嬉しい理由はそれだけではないのだけれども
 その理由はどうしたって表に出すことなんて出来はしないのだから 今はただ 純粋に兄弟として家族としてファミリーを支える仲間として 彼と共に年を越せることを嬉しく想う
 「……嬉しそうだな」
 「え?」
 そうして密に嬉しがっているのが顔に出てしまったのか 普段無口にも程があるというくらい寡黙な長兄に口に出して指摘されてしまった
 「いや……そんなことないよ?」
 流石に嬉しがっていたら不謹慎……かな
 と想い 普段通りを装いながら一応否定をしてみる
 なんだかこの長兄の鋭い眼光には全てを見透かされているような気がして この言葉も無駄なのかなと想ってしまう
 「……お前はたまに――ホントにたまにだが 淋しそうな瞳をすることがあるな」
 「え……?」
 「ベルガや他の奴らは――勿論お前自身もだが 気付いてはいないみたいだったがな お前はたまに ふとした拍子に一瞬だが 淋しい瞳をする」
 「……」
 知らなかった というか気付かなかった
 今の今まで こうして指摘されるまで全く気付くことが出来なかった
 自分がそんな感情を一瞬とはいえ表に出してしまっていたことがあっただなんて……
 しかもそれを よりにもよってこの長兄に気付かれてしまっていただなんて――!
 純粋に恥ずかしくて仕方がない
 否定することもできずに僕は長兄の珍しく長く喋る声を聴き続けることしか出来なかった
 「今日もお前は淋しそうな瞳をしていた 一体何がそんなに淋しいのかは知らないが お前が淋しさを感じるのであれば少しでも長く傍にいてやりたいと想っただけだ ちょうど今日は特別な日なんだからな ケイトとは……これから何回でも年明けを迎えることはできる」
 だが淋しがっているお前とは今しか迎えることはできんからな
 そう云ってキー兄は薄く微笑んだ
 キー兄は僕の気持ちなんて知らない
 僕が淋しがっていることには気付いても 何故淋しいのかその理由にまでは気付けない
 ――気付いてなどくれない方が きっと良いのだろうと想っても わかっていても それでも
 気付いてもらえないことが 伝えることができないというその事実が 余計に僕を淋しくさせて
 ポーカーフェイスのまま 一つ溜息を吐いた
 「そんなことでわざわざ残ってたの?もう 僕だってもう子供じゃないんだからそこまで構ってもらわなくても大丈夫だよ 全く……ケイト義姉さんが可哀相だよ」
 ほら 早く帰ってあげて
 そうして微笑んでみせたその表情が はたしてきちんと微笑みの形になっているのかどうかがわからない
 義姉に嫉妬なんてしたことはない
 ただ 少しだけ淋しくなる
 長兄の一番が自分たち兄弟ではなく義姉になってしまったことが 淋しい(そう云えばきっとキー兄はそんなことはないと云ってくれるのだろうけれども 僕が勝手にそう感じているだけだ)
 そしてそのことにより 長兄が僕から離れていってしまうことが淋しい
 ――本当はそんなことないのに いつでも僕ら兄弟は一緒にいるのに それでも淋しい
 そしてその淋しさは きっと僕がキー兄に特別な感情を抱いてしまっている所為だって 知っている
 一体いつの間にこんな感情を抱いてしまったのだろう
 よりにもよって実の兄に
 ――好きだなん て
 そうしてまた溜息を吐きかけて 長兄の双眸が自分の両目をしっかりと捉えていることに気付く
 「……また 淋しそうな瞳をしている」
 ――やっぱり この長兄の鋭い眼光は全てを見抜いてしまっているのかもしれない
 「何をそんなに淋しがる?こんなに近くにいても 俺ではお前の淋しさは埋めてはやれないのか?」
 「キー兄……」
 今すぐにでも抱きしめて「好き」と想いを告げたくなる
 でもそんなことはできないから
 二人の間に沈黙が落ちる
 キー兄はまだ僕の両目を見据えたままで
 僕もキー兄の双眸に釘付けになったままだった
 互いの息遣いさえ大きく聞こえてしまう程の静寂が空間を支配している
 何も云えない僕と何も云わないキー兄
 何もしなければ永遠に乱されることのないように想えたその静寂を打ち破ったのは 零時を告げる時計の音だった
 「……年明け か」
 「そうだね……あけましておめでとう キー兄」
 「あぁ……おめでとう」
 「キー兄……一緒にいてくれてありがとう」
 「……」
 「キー兄じゃ淋しさを埋められないなんて そんなことないから ただちょっと 僕にもキー兄たちには云えないことがあるってだけだよ そんなに深刻なことでもないし 僕は一人で大丈夫だよ だから」
 早く帰ってあげて 義姉さんが待ってるから
 そうしてまた 上手く作れているかもわからない微笑みを顔に貼り付けて
 嗚呼 早く部屋から出ていって
 なんだか泣いてしまいそうなんだ
 だから早く速くはや く
 「ラック」
 「何?キー兄」
 「――××××× ×××××――?」
 「――っ!?」
 突然の言葉に驚愕し身を固くしてしまった僕の横を 身支度を整えたキー兄がすり抜け ドアから外へと出ていった
 ドアの閉まる音を聞き 力の抜けてしまった僕は想わず床に座り込む
 「……」
 キー兄の言葉に 頭が混乱して何も考えられなくなる
 泣きそうだったのに涙なんて出てはこなかった
 ただ一つの疑問が僕の頭を支配して それ以外のことなんてもう考えられなくなっていた
 「……いつから 気付いて……?知って……たんだろう……」
 問いかけとも独り言ともつかない言葉が口から勝手に漏れていく
 云ったって仕方のないことなのに それを問いかけなければならない相手はもう目の前にはいないのに
 「……ハッ ずるいな……キー兄は……」
 自嘲にも似た吐息を漏らし 膝を抱えた
 あの長兄の中で自分がどんな位置にいるのかなんてわかりはしないけれども
 どうやら夜が明けて再び顔を合わす頃にはもう 淋しい顔なんてせずに済みそうだと想った
 「ポーカーフェイスはキー兄の方が何枚も上手……か」
 気付いていることを 知っていることを気付かせない 悟らせない
 きっと僕には無理だろうけど でも
 「それを教えたってことは……チャンスがあるって事だよね……?キー兄」
 気付けば唇の端が薄らと上がっていた
 新年早々自分と長兄の間で一波乱ありそうだなんて いつの間にか不敵なことを想っていた

 『――俺はいつまで 気付かないふりを続ければいいんだ――?』

 難産でした(いきなりか
 こんな筈では…こんな筈ではなかったのになぁ…
 まずこんなに長くなる予定ではなかったのになぁというのが一点ですが
 書いてる途中でキャラが暴走しだすのもこんな筈ではの大きな要因ですよね(知るか
 ラクキス難しい…っていうか キスケイ要素出しすぎでしたかね?
 まぁいい(ロニー自重
 っていうか 攻めが弱々しくて受けが男気っていうのがこのサイトでの定番になってきていてなんだかなーって感じです
 イケイケ押せ押せな攻めか乙女な攻めか弱々しい攻めしかいないんですかね…
 片想いだとどうも攻めが…
 まぁいい(だから自重しろと(ry
 では かなり遅くなりましたがあけましておめでとうございました
 今年も宜しくお願い致します