「我が儘になりきれたほうの勝ちだ」
キースは我が儘を云わない
遠慮しているのか自制心が強いのか それとも満足しているのか
とにかくキースは我が儘を云わない
俺はキースの我が儘を聞いてみたかった
いつも寡黙な恋人が云う我が儘というものを聞いてやりたかった
だから俺は直球にキースに聞いた
「なぁキース 我が儘云ってみろよ」
いきなり何を云い出すんだ
キースの瞳がそう云っていた
表情も怪訝なものになっている
まぁ訝しまれても仕方ないかと想いつつ もう一度同じ言葉を云ってみる
「いいから 我が儘云ってみろよ」
そう云えばキースは溜め息を一つ落とし 眼を伏せた
意識してか無意識にか キースは話を打ち切りたいときにそんな仕草をする
余程嫌な話題のときにしかキースはこの仕草を見せない
しかしまぁ 俺がこんな風にキースに何かを強要するなんてよくあることで
いつもならば適当にあしらったり頷いたりしてやり過ごすというのに こんな風に拒否をするというのは一体どういうことだろう
そんなに嫌だったのか?俺に我が儘を云うことが――
……おかしい
いつも俺がキースに強要していることの方が数倍嫌がられそうなものなのに それでもキースは俺の我が儘をきいてくれていた
それに比べれば我が儘を云えなどむしろ日頃の仕返しをする大チャンスぐらいのものだろう
だというのにこの態度……
……おそらく おそらくだが きっと何か理由があるのだ
我が儘を云わない理由が 云えない理由が 云えずにいた理由が
俺はそれを知りたいと想った
だから聞かずにはいられなかった
「なぁキース 我が儘を云えない理由って なんだ?」
「……」
「お前が一体何を想って我が儘を云わないのかなんて 俺はわからない 云いたくないなら云わなくてもいい でもな?好きな奴の我が儘をきいてやりたいって 俺は想う だからキース どんな理由があってお前が俺に我が儘を云わないのか知らないけど 俺はどんな我が儘だってきいてやるから だから」
甘えてもいいんだぞ?
そう云って微笑みながらキースの頭を撫でてやると キースは泣きそうな顔をした
なぁ 一体何が辛いんだ
何でお前はそんな 今にも泣きだしそうな顔をするんだ
聞かせてほしい そんな顔をしてしまうほどのお前の我が儘を
「キース……」
「いいのか?俺は……お前なんかよりもずっと我が儘で傲慢で欲張りなんだぞ――?それでも 俺の我が儘をきいてくれるの か――?」
「あぁ勿論だ 俺を誰だと想ってるんだ」
そう自信満々な笑みを浮かべてやれば キースは少し微笑んで(でもまだ泣きそうな顔をしたままで)俺の首に手をまわし引き寄せると 肩口に顔を埋めて弱々しく声を発した
「……俺の傍に 俺だけの傍にいてほしい」
消え入りそうな声で しかしはっきりとキースは望みを口にした
確かにそれは強欲な我が儘なんだろう
だけど
「馬鹿だなキース そんなこと 俺だってずっと想ってた」
そう苦笑しながら 俺の肩口に顔を埋めたままのキースの頭をゆっくりと撫でてやる
いつも気丈なキースが小さく震えている
互いに互いを束縛し合えないとわかっている関係だからこそ この我が儘を口にすることはきっと辛かっただろうと想う
「ごめんな」
「……何故謝る 我が儘を云ったのは俺だ」
「云わせたのは俺だ お前がどうしても云いたくなかった我が儘を 云わせたのは 俺だ」
「……」
「だから ごめんな 俺にはお前の我が儘を完全にきいてやることはできない」
「そんなのは……俺だって同じだ」
「あぁ 知ってる」
でも ごめんな
そうして少しだけキースを俺の肩から離し 額に唇を落とす
互いだけにはけしてなれはしないけど 愛していることに違いはないから
互いの我が儘をぶつけ合うように唇を重ねた
fjord様より
切ない系クレキス
いい加減こういうのやめようかな…原作丸無視で堂々ラブラブなの…書きたい…(でもできない)
クレアがクレアじゃないですねこれ 最後怒涛の謝りまくり
あ ちなみにこれ 二ヶ月前から書き始めて一ヶ月ほど丸々放置してたブツです(死)
放置癖…いい加減にすればいいよ