確信犯の毒牙にかかる
俺は今非常に困っている
困っているというか 悩んでもいるし戸惑ってもいるし驚いてもいるし動揺もしている
後少しだけ絶望もしていたりする
何に対してだと云えば 今俺の隣で眠っている幼馴染に対してだったりする
何故かと云うのなら それは俺がこの幼馴染に対して……その 恋愛感情 というものを 抱いてしまっていることに気付いてしまったからだ
「……」
とりあえず俺は頭を抱えた
何でだ 何でコイツなんだ
俺には最悪に狂った殺人鬼を好きになるような趣味はなかった筈だ いや ない筈だ
俺が頭を悩ませている隣で その原因である幼馴染――ラッド・ルッソはすやすやと心地よさ気な寝息を立てている
――人の気も知らないで――
少し……いや かなりラッドに怒りを覚え 俺はラッドを起こそうと肩に手をやり揺らしてみた
「おい ラッド もうそろそろ起きろよ」
「ん〜……」
不機嫌そうに一つ唸り眉間に皺を寄せ 俺の手を振り払おうと腕を俺の手に当ててくるその姿はまるで子供だ
「まったく……いくつになってもお前は餓鬼みたいだな」
そんなラッドに想わず微笑みを浮かべてしまい そんな自分に気付いてまた頭を抱える
何が微笑ましいことがあるんだ……馬鹿か俺は!?
「ん〜……?」
そうやって俺が頭を抱えて唸っていると また一つ唸り声を上げてラッドがゆっくりと目を開けた
「……朝?」
「……おぅ」
「眩し……」
カーテンの隙間から漏れる朝日に目を細め 掌で目元を覆うラッド
そのまま数秒じっとしていたが のろのろと上半身を起き上がらせる
「おはよう ラッド」
「んぁ はよ……」
まだ眠くて仕方ないのか挨拶すらもまともに云えないラッドにまたしても微笑みが漏れる
「……ぁに笑ってんのぉ?」
「いや……」
微笑んでいることがばれて 想わず目を逸らす
でも逸らした理由はそれだけじゃない
上半身を起こした所為でシーツがずり落ちてしまい その下に隠れていたラッドの白い肌を露にしてしまっていた
これまでの俺ならばともかく 今のラッドへの感情に気付いてしまった俺ではそれを直視し続けるなんてことは到底出来なくて
結果 目のやり場に困り目を逸らす羽目になってしまったのだった
ところで どうしてラッドが俺の隣で裸で寝ていたのか疑問に想うかもしれないが
別に深い意味は無い――と云えたらどんなに良かったか
はっきり云おう
俺とラッドは 世間で云うところの「セフレ」という奴だったりするのだ
しかもその始まりは酒の勢いからで その関係が今までずるずると何故か続いてしまったというどうしようもないもので
今のこの状況に溜息を吐きたくて仕方がないというのに この事実にもまた溜息を吐いてしまいたい
そうして俺が何も云わずに目を逸らし続けていると ラッドが俺の目の前に顔を移動させてきた
「おいどーしたのよ?なんか変だぞ お前」
「……なんでもねー」
ヤバイ なんとなくだが顔が朱くなっているような気がする
目の前で俺の眸を凝視する青い双眸からそろそろと視線を外し なんとか平静を保とうとする
しかしそんな俺の努力を知ってか知らずか ラッドは俺の目線の先に顔を移動させてくる
「なぁ ホントにどーしたよ?」
「だから なんでもねーって云ってんだろ?」
「……ふ〜ん?」
顔が朱くなったことがばれたのか ラッドがニヤニヤとした笑みを浮かべる
「なんでもねーの?」
「な んでもねー よ」
ラッドの顔が段々と近付いてくる
心臓がヤバイくらいに大きな音を立てている
マズイ
想わず目を固く瞑る
と その瞬間 唇に温かくて柔らかいものが触れた
ほんの一瞬しか触れていなかったが それだけで充分俺の顔は真っ赤になってしまった
動悸も凄まじいことになっている
「ラ ッド……」
「これくらいでそんなに顔朱くしてんじゃねーよ」
目を開けると悪戯っこのような顔をしたラッドが目に入る
首から下の扇情的な身体と首から上の幼さを残した表情とのミスマッチに眩暈を覚えた
くらり
「ラッド」
「あ?」
気付けばラッドの頭に手を回し 唇を合わせていた
先刻のラッドのしてきたような一瞬のキスではなく 深く長いキス
息を継がせる間もなく しつこく口腔を掻き回すようなキス
そうして数十秒ほどラッドの唇を貪って 漸く俺は唇を離した
「ラッド……ヤバイ 俺お前が好きだわ」
咳込むように肩で息をするラッドを抱きしめ 俺はラッドに想いを告げてしまった
ラッドが息を整え終わるまでのほんの二三秒がとても長く感じた
と ラッドが俺の耳の横で突然堪えきれないといった風に笑い始める
何が可笑しいんだかわからず困惑する俺をよそに ラッドは目尻に涙まで浮かべて笑い続けている
「お おい ラッド?」
「あーもうお前ってば鈍感!今更かよーお前よー」
「は?何がだよ」
「お前なー……知ってたっつーの!そんくらい セフレになる前からずっと!」
「……は?」
「だーかーらー お前が俺を好きなことくらいずっと前から知ってたっつってんの!」
「……は?」
ちょっと待て
ラッドの想いがけない言葉に俺の頭は今までにないほど混乱していた
何で気付かれてるんだとかそんなに前から俺はラッドに惚れてたのかとか俺ってそんなにわかりやすい奴だっけとか色々な疑問が俺の頭を過ぎっていくが その中でも最大の疑問が口をついて出ていってしまう
「お前……じゃあ何でそんな俺とセフレなんかになってんだ……?」
俺がそう問い掛けると 今まで笑っていたラッドがピタリと笑うのを止めて深い溜め息を吐く
「お前なぁ……そんくらい自分で考えやがれ!この鈍感!!」
「は?!」
わけがわからない
というよりいきなり耳元で大きい声を出されたので一瞬思考が停止してしまった
「お おい 何だよ」
「何だよじゃねーよ!お前がそんなに鈍感だから俺がわざわざ酒の勢いに見せかけてまで押し倒さなきゃならなかったんだろーが!」
「え?見せかけてってなんだよ!?」
「あーもー信じらんねー!この鈍感!鈍感馬鹿!!」
「いやいや 鈍感馬鹿ってなんだよ ってか云ってる意味がわかんねーよ」
「煩い!一生一人で考えとけ!」
そう俺を怒鳴りつけてラッドはシーツに包まって横になってしまった
以前の俺ならばここでそのままラッドを放置しておくと云うことをしたんだろうと想うが 今の俺にはそんなことはできなかった
「ラッド……」
ラッドが何故怒っているのかわからない俺は とりあえず名前を読んでシーツの上からラッドの身体を抱きしめると云うことしか出来ない
それでも何もしないよりかはマシに想えた
ニ三分 そのままの状態でラッドが口を開いてくれるのを待った
「……俺はな」
「うん?」
漸くラッドが口を開いてくれた
そのことに内心ホッとしながらもラッドの頭を撫でながら言葉の続きを促す
「……俺は 好きでもねぇ奴と寝たりはしねぇよ いくら酒呑んでてもな」
「ラッド……それ って――」
「……ああ!もう!何でお前は気付かないんだよ!そりゃぁ他人にだってばれてるような自分の気持ちに気付かねぇ鈍感なんだから気付けって云う方が間違ってるのかも知れねぇけどよぉ!?普通気付くだろ!?まぁ関係が関係だったから気持ちの方には気付かなかったのかも知れねぇけどよぉ!」
「ラッド……」
一頻り怒鳴ってまた大人しくなってしまったラッド その顔が見たくて頭から被っているシーツをゆっくりと捲っていく
「……ごめんな ありがと」
「……煩ぇよ 馬鹿」
真っ赤な顔をして俺を睨みつけてくるラッドが愛しくて愛しくて 眉間に唇を落とした
「……くすぐってぇ」
そう云って眉間から離したばかりの俺の唇に自分のそれを重ねてくるラッド
数秒のキスを味わい唇を離すと まだ薄らと頬が朱に染まってはいたが いつも通りの悪戯っこのような表情のラッドがそこにいて
「ま とにかくあれだよな」
「ん?何だ?」
ニヤリ と唇の端を歪めて一言
「お前は俺にはめられたってことだな」
そうだな と心の中で同意して また一つキスを落とした
今回の話では一応二人は18歳ぐらいを妄想して書きました
嘘です 18歳ぐらいで妄想しだしたのは最後の十数行からです
なんていうかもう あれですね
兄貴は自分の中で完璧ツンデレキャラとして納まってしまいましたよ
どうしよう…そんな兄貴に萌える(駄目だこいつ…早く何とかしないと…
ちなみにツンデレ度合いとしては幼馴染×の場合ツン<<<デレぐらいが素敵だと想います(爆
他のは…もうブログにでも書きます
ていうかこの幼馴染は一年くらいだらだらずるずると何の自覚もなく兄貴とセフレやってて
でもある日ちょっとしたこと…多分今回みたいに朝兄貴が隣で寝ててなかなか起きないから
髪を手で梳いたり朝日に透かしたりして遊んでて んで兄貴がスゴイ幸せそうな顔して寝言で
幼馴染の名前呼んじゃって それでドキドキしちゃってでもその時点ではそのドキドキの正体に気付けないで
一週間くらい悩みに悩んででもすごいひょんなことで「恋」を自覚しちゃってそれできっと
あの冒頭に至ったんだろうなーと想った
ってか自分で書いた奴なのに…なんなんだこれはorz
後書きだらだらしすぎたのでぶちぎります
とりあえずこれだけは云わせてくれ なんだこの青春!!?