1p四方に詰まった愛
「兄貴〜!今日が何の日だかわかりますか?」
「知るか」
俺が廊下を歩いている兄貴の背中に抱き着きながら尋ねると 兄貴はあっさりと俺の質問を斬り捨てて 俺を背中にくっつけずるずると引きずりながらもすたすたと歩き続ている
「そんなっ!?男にとってこの日は大事な日じゃないんですか!!?っていうかそんなすぐにすぐに知らないなんて云うんじゃなくてもうちょっと考えて答え出しましょうよ〜」
「煩い 黙れ 欝陶しい 重い 離れろ」
「酷いっ!!?」
兄貴に単語のみで的確に怒られながらも俺は兄貴の背中により強くしがみついた
「……グラハム いい加減にしろよ?お前……」
「……だって」
「だってじゃねぇ!!重いっつってんだよ!わかったらさっさと離れろ!!」
「え〜?じゃあ 兄貴がチョコくれたら離れます」
さっきは惚けられてしまったけど今度は大丈夫だろう……なんて 俺の期待をよそに 兄貴は首を傾げながら俺に云った
「は?何でそこでチョコが出てくんだよ お前そんなにチョコ好きだっけか?」
……絶句 ただ絶句だ
まさかそんな……!!?兄貴がバレンタインを知らない(または今日がその日だと気付いていない)だなんて!!
そんなのってありか!?
「兄貴〜〜〜!!!今日はバレンタインデーですよー!俺は……兄貴にチョコを貰うためだけに今日学校に来たようなものなのに……!!」
「はぁ?バレンタインデー?……あぁ そういやぁ今日は14日だっけか っつかそれで何で俺がお前にチョコやらなきゃいけねぇんだよ?クラスの女子にでも貰えばいいだろうが」
「兄貴……俺は兄貴のチョコが欲しいんです!もうこの際手作りだなんて贅沢云いません 板チョコでも何でもいいんで兄貴の愛の籠もったチョコが欲しいんですよー!」
「お前……馬鹿じゃねーの?」
嘆く俺を振り返る兄貴の視線が冷たい
しかしそんなことで負ける俺ではない 構わず兄貴にチョコをせがみ続ける
「兄貴ー!お願いですからチョコ下さいよー!もうホント……!愛も籠もってなくていいですから……!」
必死だ 自分でもドン引きするほどの必死さだが そんなことには構っていられない
とにかくもう ここまできたら引き下がるわけにはいかない
「……あーもう しゃーねーなぁ ちょっと待ってろ」
「へ?」
「えーっと確かだなぁ……おっ あったあった ほれ」
「え……こ れ」
突然兄貴が立ち止まってポケットを探り出したかと想うと 小さな四角形のモノを俺に差し出してきた
俺は兄貴にしがみついていた腕を離すと それを受け取る
「たまたま持ってただけだけどよ 板チョコでもいいっつーんならそれでもいいだろ? 別に」
「……兄貴ッ!嬉しいですーーー!!うわぁ!ありがとうございますーーー!!!」
俺の掌の上にあるのは チロルチョコだった
でもそれだけのものでも 俺に強制されたからだとしても それでも
兄貴が今日 俺にチョコをくれたという事実が嬉しい
「兄貴……大好きですよ」
「…… 」
「……へ?」
兄貴は小声で何かを呟くと 俺の頭をくしゃりと撫でまた歩き出す
「え ちょっ!兄貴!今何て云ったんですか!?ねぇ兄貴ってば!」
「煩ぇよ」
兄貴の言葉を聞き逃してしまったことが悔しくて仕方がない
でも何となく 何となくだけど なんて云ってくれたのかが想像がつく
だって前を歩く兄貴の耳が 酷く赤くなっていたから
もうこのチョコは嬉しすぎて食べれそうにないな
なんて想いながら 兄貴の後ろをついて歩いた
バレンタインSSです
力尽きてしまったので今回はもうこれだけです
流石にもう…無理だ
兄貴はホントに忘れてたんですけど でもグラハムのこと大好きだといいなぁと想います